請求項という言語(構造化プログラミング編)

構造化プログラミングとは

コンピュータの草創期、プログラム設計者は、コンピュータ1台の動作を一気呵成に書いていました。しかし、プログラムが長くなると条件分岐が多岐にわたるなど複雑化し、メンテナンスが大変になりました。そこで、新たに登場したのが、構造化プログラミングという技法です。

構造化プログラミングとは、処理を小さな単位に分解し、階層的な構造にしてプログラミングすること。
引用元:https://kotobank.jp/word/構造化プログラミング-3287

小さな単位に分解するのは誰?

ネット上には構造化プログラミングについて詳しい解説が沢山ありますが、まず構造化プログラミングの初歩の初歩である「処理を小さな単位に分解」する点に注目します。小さな単位に分解するとは、例えば・・

(1)対象物の状況をセンサで検出する機能 (2)センサの検出結果により異常を判定する機能 (3)異常を判定すると遠隔地に対象物の映像を送信する機能・・・

前回述べたコンピュータの視点では、このような機能単位の処理の分解は困難です。コンピュータは個々の命令を逐次実行するだけ。蟻の視点です。コンピュータにとっては、自分が何のために命令を逐次実行しているか分かりません。
構造化プログラミングは、ブログラム設計者の視点に立って初めて、「処理を小さな単位に分解」できるようになります。
具体的には・・・

(1)まず、プログラム設計者の最終目的ありきから。
(2)続いて、プログラム設計者はその最終目的の達成に必要な個々の機能(function)を構想します。
(3)そして、これら個々の機能を実現する手段(means)としてコーディングを行います。

このように、機能実現手段(means plus function)の単位に分解してから組み立てることで、シンプルで正しくかつ美しい構造化プログラミングができるのです。

機能分解式の請求項

 これに近い請求項の書き方は、機能分解式の請求項です。英語で言えば、means plus function Claim です。ただし「~~手段」という手段(means)を連ねて書くだけの書き方ではありません。大切なことは、機能(function)の分解です。 
発明を機能に分解する・・・前回の携帯電話の例で言えば、例えばこんな感じです。

【請求項1】
音声を音声情報に変換して通信先に送信する送信部と、
前記通信先から音声情報を受信して再生する受信部
を備えた携帯可能な電話機。

これはざっくりとした機能分解です。さらに細かく機能分解するとこんな感じです。

【請求項1】
音声を音声情報に変換する音声変換部と、
前記音声変換部で変換した音声情報を通信先に送信する音声送信部と、
前記通信先から音声情報を受信する音声受信部と、
前記音声受信部で受信した音声情報を再生する音声再生部
を備えた携帯可能な電話機。

分解した機能を階層化してみる

 構造化プログラミングに『階層化』があるように、発明を階層化することも可能です。
『A,Bを備え、Aは~~することを特徴とする~~装置』のようにすれば、Aについて階層化ができます。
発明の特徴が、特にAにある場合、Aを階層化する表現は便利です。Aについて更に詳しく掘り下げできます。

例えば、上記2つのクレームを組み合わせて送信部を階層化すると、こんな感じになります。

【請求項1】
音声を通信先に送信する送信部と、
前記通信先から音声情報を受信して再生する受信部とを備え、
前記送信部は、
 前記音声を音声情報に変換する音声変換部と、
 前記音声変換部で変換した音声情報を前記通信先に送信する音声送信部とを有する

ことを特徴とする携帯可能な電話機。

このような3パターンの請求項から分かるように機能分解と階層化は一通りでないというのがポイントです。発明の特徴をどのように捉えるかにより機能分解と階層化はかなり変化します。
そして、機能分解は出願で完了するわけではありません。審査段階や裁判にも影響が及びます。機能分解がどのように影響するかを予め考えておくことが大切です。

審査段階での機能分解

審査/審判段階は概ねこんな流れになります。

(1)審査官/審判官は、先行する引用発明1(主引例)に対して本願発明と同様の機能分解を試みる。
(2)分解された機能単位(構成要件)ごとに本願発明との一致点/相違点を判断する。
(3)そして、相違点を埋める副引例を探す。
(4)副引例を主引例に組み合わせる論理付けが本願出願時にあったかを考える。

このようにしても審査官/審判官(当業者の代表)が相違点を埋めることができなければ進歩性があると推認されます。
したがって、発明の特徴(セールスポイント)が相違点となり得るようにしっかり機能分解しておくといいですね。

裁判の場での機能分解

一方、侵害系の裁判では、係争中の対象(イ号物件)に対して特許発明と同様の機能分解を試み、分解された機能単位(構成要件)ごとに特許発明との一致(均等)を判断します。
このとき、一致せず(均等でもない)となれば、侵害ではなくなります。
出願に際しては、発明の特徴以外で不一致とならないよう機能分解しておくといいですね。

機能分解された請求項の利点

つまり、発明の特徴を捉えた上で、過不足のない機能分解が肝要となります。
発明の特徴を捉えた機能分解は、特許になりやすく、かつ侵害の立証もしやすいです。つまり強い特許といえます。
また、複雑な発明も、機能単位に表現できますから、メンテナンスも容易です。

さて次は、オブジェクト指向型のプログラミング技法と、多数請求項との意外な関係を見ていきます。

請求項という言語(草創期編)

請求項は自然言語/人工言語?

 請求項は、日本語や英語といった自然言語を使います。しかし、同じ自然言語を使う日常会話とは随分違いますね。請求項には格段の厳密さが要求されるからです。
その厳密さという点から見れば、請求項はプログラミング言語(人工言語)に近いです。

・・そう考えると、プログラミング技法の歴史と、請求項の書き方の変遷とに、奇妙な一致が見えてきます。

草創期のプログラミング技法

 まずは、草創期のプログラム事情を見てみましょう。 

コンピュータが実用化され、その有用性が認められるようになるにつれ、その上で動作するプログラムは次第に大規模なものとなっていった。ソフトウェアの低品質、納期遅れ、予算超過が頻発し、大規模なプログラムを正当に動作するように記述することの困難さが認識されるようになった。
引用元https://ja.wikipedia.org/wiki/構造化プログラミング

草創期のプログラムの大変さが伝わってきますね。当時、プログラムの動作主体、つまりプレーヤーは、コンピュータ1台でした。プログラムがどんなに長く複雑多岐になろうと、プログラマーはコンピュータ1台分の動作を一気呵成に書き連ねていたわけです。

一気呵成式の請求項

 この草創期のプログラミング技法に近いのが、一気呵成に書き連ねるタイプの請求項です。例えば、こんな請求項になります。

【請求項1】
マイクで変換した音声信号を通信先に送信し、前記通信先から受信した音声信号をスピーカで再生する、携帯可能な電話機(携帯電話のこと)。

これは短い請求項の例です。一気呵成ゆえに、単刀直入で、発明の動作をそのまま表現しています。そのため、読んで頭に入りやすいですね。一見して、動作の主体が携帯電話一つであるというのが、ポイントです。この請求項のプレーヤーはひとり(一人称)なのです。読み手はそのプレーヤーになって請求項を読みますから、分かりやすい作文になります。

一気呵成式の問題点

 しかし、分かりやすいのは、請求項が短いうちだけです。これに電話番号用の数字キーが加わり、オンフック用のキーが加わり、回線要求の発呼が加わり、物理層からアプリ層までの各種機能が加わり、条件によって動作を場合分けするとなると、一気呵成式の請求項は急に難しくなります。

どうなるかというと、(1)多数の構成要件を説明しなければならない。(2)それら多数間の関係も説明しなければならない。(3)条件の場合分けに応じて動作を分岐させる。(4)説明があっちに行ったりこっちに飛んだり切った貼ったする。・・・ことになります。いくら正しい請求項でも、読み手の頭は付いていけず、迷子になるでしょう。

請求項が長くなると、一気呵成の勢いがなくなります。まるでコードがもつれ絡まったようなカオスの状態(初期プログラム技法におけるgoto文を必要以上に濫用した状態に近い?)。一気呵成どころか青息吐息になるわけです。

上述した草創期のプログラム事情の言い方を借りるなら、【大規模な発明を正当に動作するように記述することの困難さが認識されるようになった】といったところです。

一気呵成式の現在

 一昔前に比べれば、一気呵成式の請求項は少なくなりました。主流の書き方ではないです。
方法の発明でさえも、【~~し、~~し、~~する方法】という一気呵成の書き方は古く、【~~するステップと、~~するステップとを備えた方法】という書き方が主流です。
よほど短い請求項でない限り、一気呵成式の請求項は書かれないでしょう。

一気呵成式の使い途その1

 一気呵成式の請求項はもう過去のものという結論でもよいのですが・・
その書き方自体は、請求項の中で部分的に活躍しています。

例えば、発明の前提を、請求項1の第一段落に前書きする場合があります。【であって書き】とか【おいて書き】とか【ジェフソンタイプ】とか【whereinの前】とか【two-part formの頭】とかいいますね。落語で言えば枕、漫才で言えばツカミになります。

つまり導入部ですね。ここが一気呵成式で読みやすくなれば、技術の専門家でない人(例えば裁判官)にも、ハードルが低く見通しの良い請求項になります。

一気呵成式の使い途その2

 また例えば、発明の締め括りを、請求項1の最終段落に書く場合があります。先の例の携帯電話をもう一度見てみましょう。携帯電話として大切な要件が一つ足りないことに気付かれましたか?

【請求項1】
マイクで変換した音声信号を通信先に送信し、前記通信先から受信した音声信号をスピーカで再生する、携帯電話。

厳密に言えば、大切な動作が足りません。それは、携帯電話で通信先と会話をするということ。つまり、送信と受信を交互に行いうる機能(全二重とか半二重とかいうもの)です。もちろん、発明のポイントがそこでなく、かつ当たり前だからあえて省くという請求項のテクニックもあります。また下位請求項で会話動作それ自体が必要になったときに言及するというやり方もあります。普通はそちらの方がよいでしょう。なぜなら、途中で用もなく中途半端に全二重/半二重に言及すると、その後の動作全体を全二重/半二重に整合させなければならず、余計な限定となりうるからです。それでも書くなら、発明の締め括りとして請求項1の最終段落にサラリと書くことになります。こういう箇所も何気に一気呵成式になります。こんな感じでしょうか。

【請求項1】
 ・・・・・前段は同じ・・・・・・・
 前記送信と前記受信とを相互または同時に行う
 ことを特徴とする携帯電話。

そもそも複雑に書けずに短くまとめる形の一気呵成式だからこそ、導入部や締め括りに余計な限定も生じにくいです。一気呵成式の得手を活かした使い途です。

草創期編の小括

 一気呵成式という書き方は、場所を選んで活きるというお話でした。

次回は、構造化プログラミングと請求項の書き方との奇妙な一致です。

筆ペンの発明者は誰?

筆ペンは筆圧で想いを表現できる文房具ですね。さて、この素敵な文房具の発明者は誰でしょう。調べてみました。

発明者は文豪?

谷崎潤一郎著「陰翳礼讃」に次の一節があります。

仮りに万年筆と云うものを昔の日本人か支那人が考案したとしたならば、必ず穂先をペンにしないで毛筆にしたであろう。そしてインキもあゝ云う青い色でなく、墨汁に近い液体にして、それが軸から毛の方へ滲み出るように工夫したであろう。
(引用元:https://www.aozora.gr.jp/cards/001383/files/56642_59575.html 初出1933年「経済往来」12月号)

 谷崎潤一郎氏(以下、文豪先生)の文章には筆ペンの基本構造が書かれています。文豪先生は実際に筆ペンを試作していないでしょう。しかし、これは文豪先生の発明です。発明は、技術的思想の創作であって、物の創作(試作や実施)を成立要件としないからです。当時、この着想を出願していれば筆ペンの基本特許になったでしょう。
私ならこんな請求項1にします。

【請求項1】
液体を収容する軸部と、
前記軸部に配置され、繊維を束ねた毛筆部と、
前記軸部から前記毛筆部へ前記液体を滲ませる液誘導路と
を備えた毛筆万年筆。

 この文豪先生の発明の画期的な点は、硯も墨も不要でいつでも毛筆が使え、かつ穂先に墨汁が自動供給される点です。まさに万年の筆、文字通りの万年筆です。
ただし、試作していれば気がつく問題点があります。

[問題1]液誘導路の不具合によりボタボタと液漏れが生じる。(毛管現象との兼ね合い)
[問題2]毛筆なら水洗いできるが、筆ペンは水洗いできず穂先の墨が固まる。(乾燥防止のキャップ)

 このすぐに思いつく問題を解決して下位請求項で書いておくことは重要です。なぜなら、この問題を解決しない限り、筆ペンは商品にならないからです。請求項1の必須要件ではありませんが、筆ペンの商品としては必須要件です。したがって、下位請求項でこの部分を特許にすれば筆ペンの実施を独占できるほどの強い特許になります。

発明者は万年筆会社?

 1972年にセーラー万年筆が【ふでペン】という商標で販売しています。筆ペンの実用化第一号はセーラー万年筆です。(出展:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%86%E3%83%9A%E3%83%B3)
液漏れや墨が固まるといった問題は当然に解決したでしょう。先に挙げた文豪先生の基本発明からは課題が思いつかないため、容易に想到できない工夫をしたことになります。したがって、文豪先生の公知文献があっても、進歩性あり(容易に想到できない発明)で特許をとれたでしょう。やはり実際に最初に作ったところは強いです。基本的な課題解決を特許で抑えることができます。

発明者は株式会社呉竹?

 さらにすごいのは呉竹精昇堂(現:株式会社呉竹)。こちらの筆ペン誕生秘話に詳しいです。

ペン先が軟らかいと太い線しか書けない。逆に硬いとサインペンと同じような細い線しか書けない。これを同じペン先が書けるようにしなければならなかった。また、インキをペン先までスムーズに流す工夫も必要だった。(中略)ナイロン製の芯の射出成形時にスパイラル状のねじりを加えると、これまでの課題が一気に解決することがわかった。つまり、筆圧をゆっくりかけるとナイロン芯のねじれた部分が開く。そこへインキが十分に供給されて太い文字を書くことができる。筆圧をかけない状態であればナイロン芯のねじった部分が絞り込まれるようにして閉じる。そうするとインキの供給は抑えられ、細い文字が書けるのだった。
(引用元:http://www.kuretake.co.jp/create/brush/story.html)

 万年筆(従来技術)は、筆圧によってペン先の切れ込みが広がりインク供給量が調整されます。それを筆ペンの筆先で行うことは物理的に困難です。筆先はペン先に比べて筆圧による拡幅変化が極端で(大小の字が書ける利点でもありますが)、その極端な拡幅変化をつかってインク供給量を適度に調整することは難しくなります。普通に筆圧をかけるだけで、筆先からインクが大量に滲み出すことになります。
 そもそも書道家は、穂先につける墨の量を微妙に調整します。太い字を書くときは、事前に穂先に墨をたっぷり含ませます。細い字を書くときは、穂先の墨を僅かにします。字のトメハネに合わせて更に微妙な調整が必要です。小学生でも半紙に名前を小さく書くときは少しの墨にしますね。筆ペンは、この微妙なインク供給量の調整を万年筆同様に筆圧だけでコントロールしなければなりません。
 頭だけで考えていた文豪先生が全く考えもしなかった、筆ペン史上最大の課題が現れたことになります。
 呉竹精昇堂は、毛筆と軸の中間にあったナイロン芯をスパイラル加工することで、筆圧による微妙な拡幅変化を実現し、この課題を解決しました。この発明があってこそ、筆圧で想いを表現できる筆ペン(商標:筆ぺん)が初めて完成したと言えるでしょう。
 実際の出願があったのか確認していませんが、私が請求項を書くならこんな感じでしょう。

【請求項1】
液体を収容する軸部と、
前記軸部に配置され、繊維を束ねた毛筆部と、
前記軸部から前記毛筆部へ前記液体を通過させる誘導路を備え、
前記誘導路は、筆圧により前記液体の通過径を変化させる弾性機構を含む
ことを特徴とする筆ぺん。

 スパイラルのねじりを加えたことが原点ですが、ここは弾性機構で広く強い特許にしましょう。もちろん、下位請求項にスパイラル形状の弾性機構を加えると共に、それ以外の弾性機構(弁膜など)についても発明者に考えていただきましょう。

こう考えると、筆ペンには、着想した人と、実現した人と、完成度を高めた人、という三者三様の発明者がいたことになります。

(冒頭写真の引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%86%E3%83%9A%E3%83%B3#/media/File:Fude_pen.jpg)

質問コーナー:発明したら自分のもの?

答え:

 自分の畑で収穫した作物は自分の所有物です。食べたり、売ったり、自由にできます。誰かに盗られたら取り戻すか弁償してもらえます。それは自然なルールです。
 では、自分の頭から生まれた発明は自分の所有になるでしょうか。具体的に考えてみましょう。

Aさんが画期的な新製品を開発して売り出しました。しばらくして、同業者のBさんが同じような製品を売り出しました。Aさんは【盗まれた!!】と思いました。

 Aさんの新製品それ自体をBさんが盗んだわけではありません。Aさんが【盗まれた!!】と思ったものは、Aさんの発明です。ただ、Aさんが自分の発明といくら言っても力はなく、Bさんには不正競争以上の責任はありません。発明がAさんの所有であることを明確化しておく必要があります。

 形ある物(有体物)の場合、所有を明確化しておく方法は二つあります。

[1]鍵をかけて物をしまっておくか、
[2]物に所有権者の名前を書いておくことです。

 発明も、所有を明確化しておく方法は同じです。

 発明の場合、【鍵をかけてしまっておく】とは秘密にすることです。隠れたノウハウの発明なら秘密にできます。しかし、画期的な新製品を販売しつつ画期的な発明を秘密にしておくことは難しいでしょう。さらに、そこまで秘密にした発明ならばBさんは盗めませんから、Bさんも同じ発明を独自にしたことになります。これではそもそも盗んでいません。

 また、発明の場合、【所有権者の名前を書いておく】とは特許を取ることです。特許とは、進歩性を有する発明アイデアを、先に出願した発明者(承継人)に一定期間独占させる国の処分です。Aさんの発明が特許をとると、国はAさんの名前を発明の特許権者として登録します。まさに国が発明に所有権者の名前を書くわけです。そのことで、Aさんが発明を所有(独占)することになります。Aさん所有の発明をBさんは勝手にできなくなります。

 つまり、発明したからといって自分が発明の所有者になるわけではありません。特許庁に出願して、特許という行政処分を受ける必要があります。

ロボットを特許にするには(2/2)

前回の続きです。楽譜を撮影してエレクトーン(登録商標)を演奏するロポットです。前回は部分の発明を一本釣りして、請求項の構成を考えました。今回は消去法による別のアプローチです。

消去法による発明発掘とは

全体の発明品であるロボットから、独立して実施可能な最小単位の発明を見つけます。
そのため、発明品の中から必要性の低いものをピックアップします。例えば・・・

(1)人型ロボットだからカメラ(撮影部)で眼を代用しているが、その必要はあるだろうか?
⇒楽譜の静止画像があればよいので、その取得元や取得手段を特定することは不要。

(2)人型ロボットだから楽器を演奏しているが(機械制御部)、その必要はあるだろうか?
⇒演奏データをMIDIやMP3などの音楽データに変換すれば、ロボットの腕機構は不要になる。

そう考えると、撮影部および機械制御部は不要です。
この必要性の低い部分を全体から省くことで、独立して実施可能な最小単位の発明が発掘されます。

消去後の請求項1

必要性の低い部分を除くと、請求項1はこうなります。

【請求項1】
入力された画像データから楽譜を認識する認識部と、
前記認識された楽譜を演奏データに変換する処理部と、
前記演奏データを音に変換する音変換部と
を備えた処理装置。

これなら、楽譜(画像)で音楽を再生する装置全般を抑えることができます。

下位の請求項はどうつなげるか

冒頭の動画をご覧ください。ロポットが実際に演奏しています。これを見て気がつくことは何でしょう。
演奏を、右腕の制御と、左腕の制御で分担しているところ。更に細かくは、両腕の10本指の制御で分担しているところ。ペダルもありますから足の制御もです。
この部分には苦労があり工夫があったでしょう。工夫には発明が隠れています。発明者から傾聴してしっかりクレームアップします。
その上で、眼として撮影部を付加したり、楽器演奏する制御機構をつけたりすれば、最終形のロボットまでを漏れなく抑えることができます。

小括

このような特許戦略のアドバイスが欲しい方は、はじめ国際特許事務所までお気軽にご連絡ください。親身に検討いたします。

(動画の引用元:https://youtu.be/ZHMQuo_DsNU)

ロボットを特許にするには(1/2)


写真日記からのスピンオフです。楽譜を撮影してエレクトーン(登録商標)を演奏するロボットです。

そのまま請求項1にすると

このロボットをそのまま請求項1にすると、こんな感じになります。

【請求項1】
 被写体を撮影して画像データを生成する撮影部と、
 前記撮影部で撮影された画像データから楽譜を認識する認識部と、
 前記認識された楽譜を演奏データに変換する処理部と、
 前記演奏データに従って楽器を演奏する機械制御部と
 を備えたロポット。

大まかに全体把握した請求項1です。各部の詳細な技術事項は、下位請求項で順番に抑えることになります。しかし、これではもったいないです。

部分の発明とは

例えば、上記請求項1には【前記演奏データに従って楽器を演奏する機械制御部】があります。この機械制御部だけで、何かできないでしょうか?

・・・【楽器を演奏する義手】ができます。
この義手をつければ、腕を失った方も楽器を演奏できます。

つまり、発明品はロポットでしたが、ロボット全体を発明と捉えるのは勘違いです。
ロポットは、独立して実施可能な部分々々の発明(ここでは機械制御部など)の集まりです。

全体把握の請求項1の問題点

請求項1は、『機械制御部』の他に、『撮影部』『認識部』『処理部』が必須要件です。そのうち、どれか一つ欠けても、請求項1の範囲から逃れます。
【楽器を演奏する義手】は、『撮影部』『認識部』『処理部』を欠く上、かつ請求項1のロボットを間接侵害しません。
つまり、請求項1では、独立して実施可能な機械制御部(義手など)の発明は抑えられないのです。

部分の発明に注目するなら

楽器を演奏する機械制御部には、開発の苦労(開発費も含め)があったでしょう。その技術をこのロポットのみに使うのはもったいないです。
もしもその技術に将来性があるなら、機械制御部を請求項1にしてみましょう。例えばこんな感じです。

【請求項1】
 楽器を機械操作して音を発生させる駆動部と、
 前記楽器の演奏データを取得する取得部と、
 前記演奏データに基づいて前記駆動部の制御データを生成する処理部と
 前記制御データに基づいて前記駆動部を制御する制御部と
 を備えた機械演奏装置

 この請求項1を出発点として、請求項2以降では目を代替する撮影部を外的付加し、脳を代替する認識部・処理部を付加します。そうやってロポット全体の最終的な請求項を作ります。
 こうしてこそ取りこぼしが少なく、開発者の苦労が報われます。また、楽器演奏に限らず、エクスパートな技能(料理人の包丁さばき、剣道の達人の腕の動きなど)を可能にする機械装置で出願してもいいですね。

このような特許戦略のアドバイスが欲しい方は、はじめ国際特許事務所までお気軽にご連絡ください。親身に検討いたします。

・・・実は、このロポットまだ他にも部分の発明があります。次回に続きます。

抵抗の記号について


(三谷政昭著「信号解析のための数学」より引用)

この技術書の著者の方針も気持ちもよく分かります。そもそも回路図の長四角は、複素数成分をもつ負荷を意味していました。それを実数のみの(理想)抵抗の記号にしてしまうのは何だかなです。

この抵抗記号の変更があったとき、技術の現場はざわめき、技術者の多くが【抵抗!?】を感じたことを覚えています。トラ技(トランジスタ技術)のように今も頑なにギザギザ抵抗を使っている書籍は多いです。抵抗を長四角にしたら長年の読者から回路図が読めないと文句が来そうです。回路シュミレータのSPICEでも、抵抗記号としてギザギザが今も使えます。

そんなわけで、審査官でも、よほどのこと(審査基準室がルールを万一作るなど)がない限り、ギザギザ抵抗に36条(記載不備の拒絶理由)を通知する人はいないでしょう。なぜなら、ギザギザ抵抗がこれだけ使われていては、実施不可能や不明確の立証が難しいからです。これは元審査官の個人的意見です。

とは言いつつも、長四角の抵抗記号が国際規格のIEC 60617に基づくものである以上、外国出願も考慮すると長四角にしておくことも無難でしょうね。

いきなり!ステーキを特許にするには

いきなり!ステーキの特許が話題になっています。
その特許査定後に訂正された請求項1は・・

【請求項1】
お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備え、上記計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと,上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであることを特徴とする、ステーキの提供システム。

この特許発明(!)は異議申し立てを経て一旦拒絶されましたが、知財高裁においてその判断が取り消され、再び異議申し立てに対する判断がやり直されて特許が維持されました。「計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールを、お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとする」旨の内容になります。軽量した肉の量を他の肉と区別する印しとするなら、スーバーの肉売り場では当たり前です。しかし、そこにテーブル番号を加えて他のお客様の肉と区別するのは、いきなりステーキの業態ゆえなんでしょう。

ここでは、おまけで・・別の観点で考えてみます。

普通のステーキ店は、生肉100グラム単位のカット注文が一般的ですね。
それに対し、いきなり!ステーキは、生肉1グラム単位のカット注文が可能です。
生肉1グラム単位で料金が決まります。


(https://www.ryutsuu.biz/commodity/j120619.htmlより引用)

これなら、お客様は、思いついた記念日をグラム数にして注文できますね。
お客様の個性を活かす商売というのは、話題性もあって商売の強みです。
そう考えると・・この【1グラム単位の生肉のカット注文】を特許で守るのは、有意義ですね。

ここからが、出願代理人の調理(腕の見せどころ)になります。

ハンバーグなら1グラム単位の計量は簡単です。不足分は挽肉ペーストを付け足し、過剰分は挽肉ペーストを引きちぎればできます。
しかし、【肉ブロックから1グラム単位で肉をいきなり!切り分ける】のは、技術上の課題(困難性)がありそうですね。不足分は付け足せないし、過剰分を切り落せば無駄になります。肉切りの名人技が必要です。

そこで、この課題を解決している先行技術を調べます。
先行技術が発見できないなら基本発明の可能性があります。公知公用でない範囲で、思いついた技術を広い請求項にして出願しましょう。
また、先行技術が有っても、その先行技術にさらに課題があれば、課題解決による発明の可能性があります。

また、肉の質や焼き具合(レア・ミディアム)によって、調理後のステーキの重さは変化します。
焼き上がり後の重さ1グラム単位を推測して生肉を切り分ける技術としたら、さらに困難な課題になります。
特許になりやすいです。また、焼き上がりの重量で注文できるなら、お客様の御腹が納得する仕組みですから、ライバル社を一段と凌駕できますね。

先の出願は、商売そのものを”いきなり!請求項1”にしていますね。
でもここは、技術の汎用性を考慮して、請求項1は【肉ブロックから所定単位で肉を切り分ける】を解決する発明から入りましょう。
技術の使い道が広いなら、【肉】という限定も外しましょう。
そして、下位の請求項で、請求項1を使用した商売そのものを抑えるとよいでしょう。

当事務所にご依頼いだいた場合は、このような観点から発明発掘を常に有意義にご提案いたします。
(ので、ご相談依頼をお気軽に。)

はじめ国際特許事務所(東京)
代表弁理士 榎 一(えのきはじめ)

藤田肇先生にお会いしました


藤田肇先生にお会いしました。
先生とのご縁は、事務所の名前が同じ【はじめ国際特許事務所】という点です。
名字(姓)が同じ漢字で事務所名が同じというのは、特許事務所では時々ありますが、
名前(ファースト・ネーム)が同じ称呼で事務所名が同じというのは珍しいかもしれません。
お会いして話しが弾みました。
藤田肇先生は、機械学習で博士号を取られた専門家の弁理士さんです。
6月頃に弁理士会でAI(人工知能)講座の講師をされるとのことです。
今から楽しみです。(*^_^*)

未確認飛行物体!?

“はじめ国際特許事務所”に飾る照明具です。
SF的なデザインでいいですね。

この照明具には秘密があります。
下の紐を引っ張ると・・・

球体に変形するのでした。
スターウォーズのデス・スターを思わせる風情です。
“はじめ国際特許事務所”の遊び部分です。

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