ロボットを特許にするには(1/2)


写真日記からのスピンオフです。楽譜を撮影してエレクトーン(登録商標)を演奏するロボットです。

そのまま請求項1にすると

このロボットをそのまま請求項1にすると、こんな感じになります。

【請求項1】
被写体を撮影して画像データを生成する撮影部と、
前記撮影部で撮影された画像データから楽譜を認識する認識部と、
前記認識された楽譜を演奏データに変換する処理部と、
前記演奏データに従って楽器を演奏する機械制御部と
を備えたロポット。

大まかに全体把握した請求項1です。各部の詳細な技術事項は、下位請求項で順番に抑えることになります。しかし、これではもったいないです。

部分の発明とは

例えば、上記請求項1には【前記演奏データに従って楽器を演奏する機械制御部】があります。この機械制御部だけで、何かできないでしょうか?

・・・【楽器を演奏する義手】ができます。
この義手をつければ、腕を失った方も楽器を演奏できます。

つまり、発明品はロポットでしたが、ロボット全体を発明と捉えるのは勘違いです。
ロポットは、独立して実施可能な部分々々の発明(ここでは機械制御部など)の集まりです。

全体把握の請求項1の問題点

請求項1は、『機械制御部』の他に、『撮影部』『認識部』『処理部』が必須要件です。そのうち、どれか一つ欠けても、請求項1の範囲から逃れます。
【楽器を演奏する義手】は、『撮影部』『認識部』『処理部』を欠く上、かつ請求項1のロボットを間接侵害しません。
つまり、請求項1では、独立して実施可能な機械制御部(義手など)の発明は抑えられないのです。

部分の発明に注目するなら

楽器を演奏する機械制御部には、開発の苦労(開発費も含め)があったでしょう。その技術をこのロポットのみに使うのはもったいないです。
もしもその技術に将来性があるなら、機械制御部を請求項1にしてみましょう。例えばこんな感じです。

【請求項1】
楽器を機械操作して音を発生させる駆動部と、
前記楽器の演奏データを取得する取得部と、
前記演奏データに基づいて前記駆動部の制御データを生成する処理部と
前記制御データに基づいて前記駆動部を制御する制御部と
を備えた機械演奏装置

この請求項1を出発点として、請求項2以降では目を代替する撮影部を外的付加し、脳を代替する認識部・処理部を付加します。そうやってロポット全体の最終的な請求項を作ります。
こうしてこそ取りこぼしが少なく、開発者の苦労が報われます。また、楽器演奏に限らず、エクスパートな技能(料理人の包丁さばき、剣道の達人の腕の動きなど)を可能にする機械装置で出願してもいいですね。

このような特許戦略のアドバイスが欲しい方は、はじめ国際特許事務所までお気軽にご連絡ください。親身に検討いたします。

・・・実は、このロポットまだ他にも部分の発明があります。次回に続きます。