答え:
自分の畑で収穫した作物は自分の所有物です。食べたり、売ったり、自由にできます。誰かに盗られたら取り戻すか弁償してもらえます。それは自然なルールです。
では、自分の頭から生まれた発明は自分の所有になるでしょうか。具体的に考えてみましょう。
Aさんが画期的な新製品を開発して売り出しました。しばらくして、同業者のBさんが同じような製品を売り出しました。Aさんは【盗まれた!!】と思いました。
Aさんの新製品それ自体をBさんが盗んだわけではありません。Aさんが【盗まれた!!】と思ったものは、Aさんの発明です。ただ、Aさんが自分の発明といくら言っても力はなく、Bさんには不正競争以上の責任はありません。発明がAさんの所有であることを明確化しておく必要があります。
形ある物(有体物)の場合、所有を明確化しておく方法は二つあります。
[1]鍵をかけて物をしまっておくか、
[2]物に所有権者の名前を書いておくことです。
発明も、所有を明確化しておく方法は同じです。
発明の場合、【鍵をかけてしまっておく】とは秘密にすることです。隠れたノウハウの発明なら秘密にできます。しかし、画期的な新製品を販売しつつ画期的な発明を秘密にしておくことは難しいでしょう。さらに、そこまで秘密にした発明ならばBさんは盗めませんから、Bさんも同じ発明を独自にしたことになります。これではそもそも盗んでいません。
また、発明の場合、【所有権者の名前を書いておく】とは特許を取ることです。特許とは、進歩性を有する発明アイデアを、先に出願した発明者(承継人)に一定期間独占させる国の処分です。Aさんの発明が特許をとると、国はAさんの名前を発明の特許権者として登録します。まさに国が発明に所有権者の名前を書くわけです。そのことで、Aさんが発明を所有(独占)することになります。Aさん所有の発明をBさんは勝手にできなくなります。
つまり、発明したからといって自分が発明の所有者になるわけではありません。特許庁に出願して、特許という行政処分を受ける必要があります。